CIRJE-R-3: 雨宮 健 Takeshi Amemiya (Department of Economics, Stanford University), COE 特別講義, ミクロ計量経済学講義 Lectures on Micro-econometrics June 2005. *in Japanese


PREFACE
計量経済学(Econometrics)の分野では、しばらく前よりミクロ計量経済学(Micro-econometrics)と呼ばれているミクロ・レベルでの計量分析を扱う分野の理論研究と応用研究がさかんに行われている。このような計量経済学での研究動向はこの間の経済学における実証研究の興隆というより大きな潮流と表裏一体の関係があると考えられ、近年における計量経済学における一つの重要な流れと理解すべきであろう。
 今回は幸いにも、こうしたミクロ計量経済学の発展に際して、J. Heckman教授(シカゴ大学)やD. MacFadden教授(カリフォルニア大学バークレー校)と並んで、これまで既に世界的に多くの重要な貢献をされてきているスタンフォード大学経済学科のTakeshi Amemiya(雨宮健)教授が来日され、東京大学経済学研究科及びCIRJE(日本経済国際共同研究センター)において連続講義を行っていただく機会を得た。おそらくは滅多に無いこの機会をより有意義とするために、ここにAmemiya教授が行った連続講義の内容を「ミクロ計量経済学講義」(Lectures on Microeconometrics)として日本語でまとめることとした。Amemiya教授によればこれまで研究内容を日本語で説明したものは皆無ということであるが、それにも関わらず今回の講義を日本語で行って頂けたことは特に院生諸君には幸いであったように思われる。講義の内容はこれまで日本語では説明されたことがほとんどないと思われる高度ではあるが思慮に富んだ内容が多く含まれ、近年に発展がめざましい計量経済学(Econometrics)やミクロ計量経済学に関心のある多くの諸氏にとって非常に有用な内容であると考えられる。
 なお、この講義録をまとめる作業に当たってはCOEプロジェクト「市場機構と非市場機構の連関研究拠点」の援助を受けたことに言及しておく。講義録の作成には講義を聴講した東京大学大学院経済学研究科・統計コースに属する院生(赤司健太郎・宮脇幸治・松井宗也・松下幸敏・南慎太郎の諸君)及び国友直人がまとめたメモを元にしているが、この講義録の内容についてはAmemiya教授の校閲を経たものである。また、連続講義に先立って国友がAmemiya(1985)の第3章と第4章にもとづいてAmemiya教授の講義履修の為に前提となる確立論・数理統計学に関する若干の予備知識の説明を行ったので、その概要を付録としてまとめておいた。
 ここで講義録の作成に協力してくれた赤司君をはじめとする院生に対して特に感謝する。

CIRJE・センター長
国友直人