浅野北斗 (Hokuto Asano)
林正義　（Masayoshi Hayashi)

しばしば、生活保護基準においては多人数世帯ほど子供の費用が過度に見積もられているという批判がある。生活保護基準における適切な子供の費用を経済学的に評価するためには、等価 尺度の推計を通じて家計消費における規模の経済を数量化する必要となるが、残念ながらそのような試みは未だ存在しないようだ。そこで本稿では、慶應パネルデータに基づいた需要関数体系の推定を通じて子供数に関する等価尺度を試算し、それを生活保護基準から算定される等価尺度（保護基準比率）と比較することによって、子供の費用がどのように生活保護基準に反 映されているかを検証した。その結果、子供に関する保護基準比率は、本稿で推計された等価尺度より2012 年で7.1%～31.4%、2013 年では6.3%～30.6%に大きくなっていることが試算さ れた。

We obtain equivalent scales that allow for different number and age of children by estimating a system of demand functions with micro-data for Japanese households. We then compare the estimated scales to the equivalent scales based on the costs of living institutionally set out in the Japanese system of public assistance (PA scales). We then show that the PA scales are larger than the estimated scales. In particular, the PA scales are larger for households with a relatively larger number of children, with from 6.6% to 33.3% differences.