創刊趣旨

数量的根拠に基づく意思決定の重要性が各方面で強く意識され始めて久しい.政府の政策も例外ではない.日本でも50数年ぶりに全面改正された統計法が「統計は社会のインフラである」と宣言する時代になった.しかし,世界的趨勢に比して,日本では政府統計を中心とする各種統計の利活用が活発であるとは言いがたい.
かかる現状の基本的原因は,政府統計を作成する側の政府(より具体的には作成を担当する各省庁),活用する側(とりわけ学界と各政策を実質的に策定・実施・評価する各政府機関)および統計と統計を活用した成果の利用者である国民(および国民のために監視し伝達する機関としてのメディア)の三方に存在するとわれわれは判断している.
既存の統計が内包する各種問題点や改善を要する欠陥の検討・解決は所管省庁に委ねられ,その重要性・緊急性・解決可能性とその方策の可否の判断まで所管の統計作成部局に委ねられる状態が継続してきた.また現状ではユーザーの側からの意見や注文も実質的に届きにくく,結果として,かかる意見・注文,さらに不満や具体的解決策の顕在化が困難となっている.
統計利活用の方法・用途を開拓・改良し,具体的事例を示しつつその広範な理解を促すこと,既存統計の内容の改善点とその実現方法を検討・提案し,また潜在する未充足の統計需要を明示すること,さらに,これらの点に関する議論・意見交換を開かれた場で継続して展開することが重要であり,これこそが統計が「社会のインフラ」として期待される機能を果たす状況の確立に必要である.このように考えて,われわれはここに「統計と日本経済」を刊行する.

2011年4月28日
編集委員会(発起人一同)